愚痴かも知れない。

面白いブログを見つけたのでとりあえず紹介しておきますね。
民主党の本音"日米FTA「推進」マニフェスト"民主党の農業政策の頭脳篠原孝衆議院議員のびっくり発言録
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-ba16.html
 ちなみに俺の感覚からすると日本人の6割近くはこいつの言う事にうんうんと頷くんじゃないでしょうか。「日本は技術立国なんだから技術で儲けて非効率的な農業生産はもうやめるべきだ。」みたいな感じで。俺らは中学校時代にブラジルのモノカルチャー経済の崩壊を習ってリスクヘッジという多角経営の重要性を学んでいる筈なのですが、そんな事は全然おぼえてないんだね。もし本当にそう思っていたなら技術立国としてのプライド、もっと言うならば「魂」と呼ぶべき知的財産の保護をもっとちゃんとやれよバカと思うんですけど。あちこちに技術を配りまくってコストで競り負けるとか、そんなどこまでものんびりした日本的情緒が大好きな俺としてはまあ仕方ねえなと苦笑いです。技術で世界を制する事が出来ない(技術的に出なくて、国民の性質的に出来ない)日本が命綱を放り投げるなんて理屈から言っておかしいでしょう。日本は島国の特性を生かして自活できる国としてとりあえず存在しておくべきです。世界レベルの鴨葱国家が命綱つけずにバンジージャンプとかしちゃいけないでしょう常識的に考えて。

 あとずーっと言われてる食料自給率。あんなもんゴミです。カロリーベースだろうが金額ベースだろうが、品目の数量ベースの自給率でない時点で無駄な数字なんですよ。品目数量ベースでもそこまで必要かなあとも思いますがね、米の自給率が100%あれば日本は鎖国されても死にませんよ。豊作凶作の波を考えると平時120%は最低欲しいと思いますが。それ以外を必死こいても実需と折り合いつかなければゴミ作るのと一緒ですし。問題は生産量じゃなくて、消費量なんです。そこを突く識者はまずいない。FTAや輸出入の話では言うのに。自給率の議論になったら全然そんな事言わない。なんで言わないんだろう。そのためあまり指摘される事はないですが、供給側の供給力が低いのではなくて、実需の国産への訴求力が低いから自給率が低いという結果になっているのではないでしょうか。検証した事ないから言いっぱなしですが。

 その問題については、結構根が深いと言うか、多くの識者は国内農業の高コスト体質を批判し大規模化によってその問題が解決する事を提言してきました。未だに論調はこの事に終始していますが、正直な話この解答は片手落ちで本質からズレていると思います。高コストの理由は生産者にないのに。家内制手工業状態で人件費なんて税金対策の為に積んでるような国内農家に対してコストが高いってケチつけてるんですよ。実質ほぼ採算割れのような価格で売ってる品目が結構あると言うのに、コストが高いって。いや高いけどね。

 実質コストが高い理由は生産者に責任があるかと言われたら俺はノーだと思ってます。取りあえず量取れば良いって思って施肥が異常に多いとか農薬が多いとか、まあそういうところもありますが、じゃあそれを1割削ったら1割安くなるだけじゃないですか。5割以上安かったりする海外の農作物と何が違うんですか。自分の努力でどうにかなるレベルをとうに超えるコスト競争を強要してドヤ顔してる識者には正直疑問を覚えます。ちなみに大規模化によるコスト低減効果も日本では大きな効果がないのです。土地集約が難しいのも一因ですが、それは本質とはちょっと言えません。だって今の単価でやっと折り合いが付いてるだけですから、大規模農家なんて。外国と争う為に更なるコストダウンをする事なんて生活費を削って奴隷にならない限り無理です。

 根本的な問題点はいくつかあります。まず、日本の風土。四季があり高温多湿な日本の環境は基本的に病害虫との戦いが発生します。その為に農薬や肥料の投入量が増え、コストが上がってしまいます。無農薬、有機肥料での栽培となると、収量減がネックになります。更に言えば小麦の大産地のオーストラリアでは圃場や倉庫で小麦の水分がほとんど飛ぶので乾燥調整なんてほとんどしないそうです。日本は灯油を燃やした乾燥機に突っ込んで乾燥させます。ちなみに放っておくと全て発芽麦になって売り物になりません。このように日本では製品を作る為に大変手間がかかる環境になっているのです。気象兵器でも用意してもらわない限り勝てる気がしません。唯一北海道が冷涼乾燥の気象条件と大規模化に成功しつつありますが、それでもコストは精一杯下がっているのが現状と言えます。
 あとそもそものコストである肥料、農薬、機械、燃料が高い事も問題点のひとつです。国内で作るとコスト高で値上がり、輸入すると何故か高値、正直大企業面している彼らが少し辛酸なめたら日本農業のコストは一変するんですがね。半値で売ってくれれば製品価格も安くできると思うんですがね。誰も突っ込まないですよね。輸送コストにしてもそう。保管コストにしてもそう。機械だって取りあえず人が死なない程度に安全であればあんな複雑な職人手作りの一品みたいな農機具でなくても良いと思いません?こんなところにもガラパゴスが発生していて時々悲しくなります。使えば楽は楽なんでしょうけどね。機械投資をおざなりにした生産者ほど金持っていると言う不思議な事実があったりするので、彼らも生活があるんでしょうけどもっとお客の事を考えて欲しいな、とは思います。サービス的な意味ではなく。開発にそういってやりたいです。種苗なんかも難しいところですけど現場を知っている人間としては不当に安い印象があるのであえてケチはつけません。あれも技術立国の根幹のひとつだと思いますしね…全然使いこなせないで盗まれてばかりですけど…
 流通コストについてはちょっと言いましたが、日本の流通コストって多分に「規格分け」のコストってあるんですよね、その為の大型共同選別施設や調整施設があちこちにありますが、ああいう億単位の箱モノ(あえて箱モノといいます、すみません)が運営費として生産者手取りを大きく下げてたりします。消費者が当たり前のように買ってる綺麗な農産物はそういう機械や人手があるからできることですが、価格を大きく引き上げたのはアレである事も事実です。今さらやめられる訳がないのですが、単純に価格の中で、馬鈴薯なら3〜4割、米麦なら多くて1割くらいが調整料名目のコストと言って良いです。個人選別だと0円扱いで手取りが増えますが、それは単に農家さんのタダ働きなだけで結局なにがしかの対価やロスが発生している訳です。そもそも国内市場の歴史的に規格分けが発生したのは販売単価を上げる為で、皆が「俺漏れも」のレベルで追従した結果が今の市場規格な訳ですが、じゃあみんなが規格分けをやめてコストダウンしたところで、その価格ではやって行けない事実があるんですがね。根本的な問題ではないと言う意味ですが、これもコストの枝葉ではあるので一応解説しました。
 土地価格や税法なんかは詳しくないのですが、一応形式上の優遇があります。あまり意味を感じませんけどね。目下一番効果があって確実な手法と思われるのはデフレ経済のただ中にあって価格が卵以上の優等生でむしろインフレしている肥料農薬機械燃料の価格と生産物単価の乖離の解消なのだと思います。非農家みんな死ね、とか言っていいなら非効率な自給自足型農業に立ち戻れば解決するんですけどね。

 と、以上の問題点を踏まえ、現実的な足がかりとしての民主政権の戸別保証はどうなのかなーと思ったりもしますが、問題の本質はそこには無くて、国産農産物の価値が異常な過小評価を受けているこの日本市場がおっかしいんだよなーって思うのは俺だけですか、そうですか。