煮詰めたら炭になる

 少しアルコール入ったら愚痴が止まらないのもどうかと思う。
 大尉の気持ちがわかるというと多分嘘だよなあ。「なぜ貴軍と我々は こうまで違ってしまったのだ?」と言う怨嗟はわかるけれど、それに至るプロセスも原因も違うしな。個人的にいま思っている事は全く同じで、それが生来の差だろうと環境の差だろうと、努力の差だろうと、何でも良いんだけれど。煮詰めすぎると「どうしてこうなった?」でしかなくて、それは俺の認識の中ではタチが悪い「軽いジョーク」でしかないからそこまで微分したくはない。なんでいま俺はここでクソ不味いワリッカのウーロン茶割りを飲んでわかばを葺かしながら毒づいてて、世の中は相変わらずなのか全くわからない。そこにあった切欠なんて路傍の小石だったのかも知れないし、俺が気が付かなかっただけで周りから見ればあっさりわかるレベルの何かだったのかも知れない。「もし」なんてモノはないし、これはなるべくしてなった当然の帰結で他に道はなかったのもわかってる。そうはならなかった、だからこの話はここで終わりなんだ、って話でもあるのだけど。だからってニコニコ笑って「人生長いんだからまだまだ良い事沢山あるよ!」なんて言えると思うか?

 良い事もあるだろうし悪い事もあるだろうな。それもひっくるんでオールインワンで「じゃあこれで。」って選んだのが俺。まあそれはそれで良いさ。これが俺が企図して描いた絵面だってなら、それはそれで受け入れる。この絵図しかなかった訳じゃない。もっと他に、綺麗な何かがあったんだろ?それはこっちに来るもんじゃなかった、って話ならそれは手前の責任だしな。自分が描いた上で愚痴ってるなら、そりゃあ都合が良すぎるわな。それを自己責任で受け入れきれるかどうかって話だ。そこに突っ込んだなら、その敗けはお前が背負えって話。その結果としての、居心地が良くて、ぬくぬくと、そうやって暮らせる今の状態は、正直な話嫌いじゃない。5年もここに居たからわかるよ。他人を恨んで、呪って片付く不満なら、そんなもんは不満じゃないだろ?責任転嫁で誤摩化せてるうちはそれは幸せだよ。どこにも行きようが無くなったら、それは多分地獄だろうな。そこで生きてるなんて信じられねえけどな。何なんだ、お前一体何で出来てるんだ?

 どっちにもつかないからクソだ?じゃあそれでいいんじゃねえか?タチが悪いってのはわかってるよ。

 空の星に精一杯手を伸ばしたってそれは届かない。わかってても、見えてるから、手を伸ばして。届かない事をわかってて、それでも手を伸ばして、嗚咽する。滑稽だとは思うけどな。どうしてあいつはここでしゃんとたっていられるんだ?妬ましい?そうかも知れないし、なんか違う。俺はそれが何なのか知りたいけれど、きっとそれは知ったところで俺には理解できないんだろうな。ただそれだけの話だって、わかってても。

 そこでハイおしまいじゃ、しめしがつかねえんだよ。畜生飲み過ぎた。まだ足りない。もっと飲ませろよ、明日もその先も知った事か。