農家と農地の余談

 最近聞いた話では、田畑の価格がまた下がる可能性があるとの事。まあ基本的にこのご時勢で農地価格が高止まりなんてあり得ない訳だから仕方ないんですが。とはいえこれは案外重たい問題なので一応紹介しておきますね。この側面は中小企業とかにも同様に襲いかかってる話でもあるので。
 実際どのくらいのペースで下落しているのかはググればどこかに出てくるので探してもらうとして、現状は基盤整備の上田で30k/aくらいで、畑はもっと安い感じです。まあ北海道の数字なので、内地から見たら相当安いらしいですけど。ちなみに10年くらい前だと40〜50k/aだったような気がします。ちょっとうろ覚えです、というか実数は流石に出せません。

 で、農地価格の下落自体は新規就農者、規模拡大の為にはメリットなんで、流動化はいろいろな目論みの中で今後も加速していくだろうと思われます。坪あたり千円以下ですからね、宅地なんかと比べたら破格です。一度に買う量がハンパ無いので実際には数千万円の支払いとか当たり前なんですけど、保有合理化事業に乗れば5年、または10年間借地として地代を積み立ててから買い取り出来たりするので、農地の購入に対してのハードルは結構下がってきているのが実情です。もちろんその裏には、そうでもなければ規模拡大もロクに出来ないほど疲弊した農村の実情とか、農地価格の下落で苦渋を舐めた農家がいるのですが。

 と、まあ単純に安く手に入るメリットだけかと言うと、実際はそうではありません。まず購入する農地を現金で支払い出来るのであれば何ら問題はないのですが、大抵の場合はお金を借りる訳です。価格にもよりますが普通は10年〜20年の期間借り入れると思いますが、じゃあこの債務の保全はどーすんの?って話ですよ。必然的に購入地+αが抵当に入ります。もしくはメインバンクの定期貯金、保険金の積立金なんかを担保に取るケースもあるでしょう。機関保証もケースとしてはあったと思います。金貸しは農家が潰れた時に貸し付けが焦げ付かないように出来なければお金は貸しません。当然保全をするのです。そして毎年、土地の価格が変わるたびに担保の評価を見直しているのです。

 つまり、土地の価格が一気に下落して、仮に返済している借金の残高より安くなった場合、追加の担保を徴収したり、保全の不足相当額の借金の繰り上げ償還をさせたり、酷い場合には返済途中であっても全額返せと言ったりする訳です。

 その辺はラインシート分析の結果なのでアレなんですが、不況時の製造業や不作時の農家は年度末の収支があっさり赤字になったりして危険水準認定されたりしやすいので、今は割と危険な状況だったりします。特に今年は小麦がイッテルビウムもとい穂発芽等で品質死んでますからね、来年に向けて再生産する資金が残るか微妙なラインです。

 また資産価値の毀損が与える影響は他にもあります。現在のコンバインの価格は新品で1,000万とか稼働率が1/12年くらいのアイテムにしてはもの凄い事になってるので(田植機はそうでもない。トラクターはその汎用性の割に安い。ただし数々のオプションパーツをフル装備するとなんか酷い事になる)、結果的にまた借金をしないといけない訳です。で、こいつの保全もしなきゃならん訳ですよ。もうその辺は土地で対応しないで良い資金もありますが、そうやってドンドン借金漬けになっているのが現在の農家の実体でもあります。
 しかもこれらの農機具は概ね10年以内に買い替え需要が起きる訳です。もう少し何とかなるのかどうかは現場の判断によってまちまちなんですが、毎年かかる整備費が我慢ならんレベルになったら買い替える、というのが何となくセオリーっぽいです。まあその辺の問題を「買わずに」解決しなさい、といわれるのがオチでしょうが、実際そうはなってない理由って何なんだろうなあと思ったりする次第です。